「医療データの活用を考えてみる」Vol.9

個人の健康情報を記録すること

 皆さん、こんにちは。JMDCの寺島です。

 先日、時間生物学会という学会に参加してきました。一言では、なかなか難しいですが、「人類を中心に生物の周期現象(体内時計)に関する研究」という感じでしょうか。生活リズムや睡眠リズムなどの話題でした。その中で、時間栄養学の話題がありました。最近、偶然、書店で手にした本が、まさにこの時間栄養学の話であり、体内時計を考慮した栄養学とでもいう感じでしょうか。例えば、どんな栄養をいつ取得するとどのように体内時計に変化をもたらすのかなどなど。コロナ禍で、テレワークや外出する機会に変化があり、やはり食生活にも影響がある中で、まだまだこの領域は、情報が圧倒的に少ないようです。お話をされていたのは、早稲田大学の柴田重信教授でしたが、非常に興味深いお話でした。
 ちょうどその話題の中に、自分の食事を記録するという話題がありましたので、自分の情報を記録するということについて、今回は考えてみたいと思います。

【食事を記録するアプリ】

 食事を記録するアプリに、askenという会社が提供する「あすけん」というアプリがあります。2007年という比較的早い時期から、栄養士の知見と人工知能を掛け合わせたサービスを始めていて、500万人以上の会員がいるそうです。
 このアプリは、日々の食事記録を基にAI管理栄養士からアドバイスをもらえるという点らしく、料理写真をアップすると、AIによる画像解析され、メニューを解析し、カロリーや栄養素の結果が表示されます。(別にこのアプリの紹介が目的ではありませんが)
 時間栄養学でもこのアプリを用いた研究が行われ、データが蓄積され、研究が行われているらしいです。

【印象的だった二つの視点】
①利用者個々に対する情報提供
 今回、このコラムで取り上げようと思ったのは、印象的だった話題が二つあったからです。
 その一つは、このアプリでは、料理の写真を解析し、あくまでもその栄養素等から一般的に、食事についてアドバイスをするというものであり、個々の生活習慣等に応じたアドバイスまではできていないので、今後はそういうことができればよいという発言でした。ただ、そのためには、さまざまな情報を集めたりする必要があるという点です。なるほど、これがPHR(パーソナルヘルスレコード)の一つのサービスだなと感じました。
②アプリを利用する人の特性
 もう一つは、明確には取得していないらしいですが、こうしたアプリを活用している人は、「意識が高い人」が多い傾向になるという点でした。JMDCでもPHRサービスのPep Upを活用したことをいろいろとお話していますが、確かにそういう意識が高い人が多いような傾向はあるのかもしれないので、仮にこういうサービスを研究や新たな知見を得るために活用するのであれば、いかに人々の生活に入り込むことができるかということが非常に重要だと感じました。

【健康情報や医療情報を取得する仕組み】
 上記の二つの視点について、改めて、考えてみました。
 JMDCでは、昔から、レセプトデータや健康診断データを扱っています。これは以前にもこのコラムで書いたように、診療報酬を請求する過程で生じるデータであり、本来は、別の目的があるものを、異なる目的で使っている例になります。これはあくまでもデータの二次利用という位置づけになります。
 一方で、最近では、PHRやEHR、EMRなど、個々の情報を記録し、それを自身の手元でも管理できるようなシステムが注目されているのは皆さん、ご存じのとおりです。レセプトデータや健診のデータは、この「個々の情報を記録する」というところに使われるデータにもなっています。

【情報をいかに多く蓄積できるかは、難しい】
 このコラムでもたびたび登場する「Pep Up」サービスは、JMDCが健康保険組合の加入者向けに展開するPHRサービスの一つです。ここでは、利用者に対して、健康情報を提供したり、アンケート調査などを実施するなどをしています。そして、ウェアラブルデバイスとも連携をして、利用者が健康に関するさまざまな情報を一元的に管理ができるようなサービスになります。
 利用者は、そこに情報を登録することで、さまざまな恩恵を受けるので、情報を連携してくれます。また、そこで得られた情報を利活用しようと思えば可能です。
 そうすると、利活用する側の人は、自分たちの欲しい情報をそこで収集しようと考え始めますが、なかなかそんな都合よく情報を集めることはできません。先に述べたように利用者が享受するものがあり、始めてそのサービスに情報を登録するという視点は忘れてはいけないのです。
 東京大学の上田泰己教授によると「健診」と「検診」の違いです。「健診」は人々が健康であるかどうかをチェックすることであり、「検診」は人々が病気であるかどうかをチェックすることになります。前述したようにPHRはあくまでも人々が健康であるということを支援するサービスであることは、PHRサービスを利活用する上では忘れていけいないのかもしれませんね。

【情報を登録した人々の特性】
 実は、こうしたPHRサービスを使う人には何かしらの特徴があるのかもしれない?ということで、私たちは、最近、Pep Upを介して、アンケート調査を実施しました。fitbitやAppleWatchなど、ウェアラブルデバイスを付けている人も多く見かけますよね。私もこの手の製品だけで、5つくらい買いました。。。(どれか一つしか装着はできないのにも関わらず、複数持つ意味は自分でもわからず、、、単に新しいもの好きなだけなんですが)
 調査内容については、12/21-12/23で開催される第80回日本公衆衛生学会学術総会でポスター発表をしますので、そちらをご覧いただければと思います。PHRサービスなどをどういうきっかけで始めたのか、調査をしてみて、なるほどと感じましたので、抄録を以下に掲載しておきます。

 人々の健康情報や医療情報を活用することは、医学研究や医薬品開発にとても有効な情報です。臨床研究法などがあり、なかなか従来の研究実施が難しくなっている中、情報の二次利用をすることというのは、簡便な方法かもしれませんが、自分たちが欲しい情報がそこに必ずあるという訳ではありません。提供する側、受ける側の両者が理解をし合いながら、進めることが大事なのかもしれませんね。

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